みずほの楽天出資と提携の研究Ⅱ(みずほ側のメリット)
みずほが楽天銀行に10.52%の出資をするというニュースリリースが出た。https://www.mizuhobank.co.jp/release/pdf/20260520release_jp.pdf
お互いの思惑、メリットは何なのか読み込んでみた
1 みずほの現状の弱点
みずほの弱点と言われているのは・自己資本規制で融資が広げにくい・金利ある世界で融資額に比べて預金が不足しがち・対面重視でIT化が遅れている・海外進出の遅れと言われており、社内システムが安定化した後の次のステップとして課題になっていた
2 楽天との協業でどのように変わるか
2.1 自己資本規制について
①自己資本規制とは何か
バーセル規制に含まれるもので大別すると自己資本規制、流動性規制、レバレッジ規制になる。自己資本規制の自己資本率の計算式は
「自己資本比率=自己資本/RWA(リスクアセット)」
RWAは現金や国債など安定資産や企業融資などのリスク資産をリスク率をかけたものの総和になる
自己資本も何種類かあるが一番重要視されるのはCET1(内部留保+国債/普通株)
これが最低、8%。国際銀行(G-SIB)にはさらにG-SIB追加資本、資本保全バッファ、ストレス時バッファ規制が上積されて10~12%程度必要になる
企業融資のようなリスク資産のリスクウエートは100%なので融資すればするだけ分母が増える
住宅ローンは35%なので0.35を掛けた金額だけが分母に加算、国債は0%なのでいくら買ってもRWAは増えない。インフレ率より低い利回りしかない国債をなぜ銀行が買うのかの理由がこれである
みずほは融資案件があってもこの規制に引っかかってあるだけの仕事を取れないという現在の状態
②楽天へのパッケージ化された企業案件の売却
今回のニュースリリースの一文「「みずほ銀行がオリジネートする法人向け貸出の、楽天銀行による安定的な取得を可能とする枠組みを両社で構築することを検討してまいります。取得対象資産について、コーポレート貸出だけでなく、プロジェクトファイナンスやファンド投資等、多様な資産とすることも検討してまいります。」に打開策が書いてある。
オリネージとは“アレンジ・組成”の意味で貸出案件において・顧客開拓・案件組成・条件設計・審査 を行い、リスク・収益性等を評価して貸出可不可、詳細条件の設定を行うもの
このパッケージ化した案件を楽天銀行に買い取ってもらうという事である。これによりみずほのリスク資産がその分なくなるのでRWAが減ることで新しい案件を受注できることになる
楽天側も自分の弱い分野である大手ビジネス案件を運用先として入手できることになる
2.2 資金の確保
楽天はネット銀行の最大手の一つであり、低コストで預金を集めるのに長けている。みずほは前項のパッケージ化した案件を購入してもらう事でこの預金を間接的に入手できることになる
一般的な若年層は今はネット銀行が主流になりつつあり、みずほが単独で構築するよりこのようなルートでその預金を入手できることは大きい。今まで通り、対面で富裕層やビジネス案件に対応していればいいからである
2.3 IT化
前項のように今後ともみずほが顧客窓口を対面で行うにしてもバックヤードや顧客管理等のIT化は進めていく必要がある。大量の小口顧客を扱っている楽天のノウハウを入手できるのでIT化の推進も楽になるだろう
2.4 海外進出(北米)
現在の北米でのみずほの事業は法人融資/投資銀行(IB)/M&A/DCM/ECM/プロジェクトファイナンスが主流である。この方面の拡大のために2023に企業買収したM&Aアドバイザリーを業務とするGreenhill & Co.を活用している。
つまりB2Bしかやっていない。 楽天が国内で磨いた個人顧客獲得、個人/小規模企業のデータ構築を持ち込むことで一定のシェアを獲得できればそれを使った法人営業も可能になってくる
3.更なる協業効果
3.1 楽天データからのみずほ潜在顧客の発掘
楽天の持つ楽天市場の出店者/楽天カード加盟店/楽天ペイ加盟店/広告出稿企業に関するデータをフィルタリングすれば、みずほの顧客となりうる・売上急成長している店舗・キャッシュフローが安定している中小企業・輸出志向の事業者を発掘することができる
3.2 米国での富裕層へのアプローチ/金融商品への紐付け
楽天は米国内で下記の企業を買収してきた。みずほとの連携を考えるうえで特に重要なのはRakuten Rewardsである。Rewardsはどの商品比較をしたか/どのブランドを迷ったか/どの広告に反応したかの情報を持つなので富裕層の高級不動産検索/ラグジュアリー旅行/EV比較/AI関連投資などに関する状況を推察できる予測される金融需要を拾い上げみずほの融資に紐付けることも可能になる またみずほのプライベートファンドの潜在顧客を洗い出す事にも使えるはずである
