2026年6月30日放送のNHKAMラジオ番組「マイあさ!」における、NTTチーフエグゼクティブフェロー・川添克彦氏へのインタビュー内容のまとめ。
1. IOWN(アイオン)の概要
正式名称: Innovative Optical and Wireless Network(革新的な光と無線のネットワーク)
基本原理: 従来の電気中心の情報社会から、光中心の社会基盤への移行を目指す技術。情報を光で伝え、光で様々な情報を処理する。
特徴: 光は電気と異なり抵抗による発熱(エネルギーロス)がほとんどないため、圧倒的に少ないエネルギーで大容量・超低遅延の通信が可能となる。
2. 生成AI普及における電力問題の解決
現状の課題: 生成AIの急速な普及やクラウドサービスの拡大に伴い、24時間稼働する巨大なデータセンターの電力需要が世界的に急増しており、このままでは数倍の発電所が必要になると懸念されている。
IOWNのインパクト: 光半導体などの活用によりエネルギー効率を劇的に向上させ、生成AI等で消費される電力を最終的に100分の1程度に削減することを目指している。
3. 社会的・産業的な応用分野とメリット
IOWNが持つ「大容量」「超低遅延」「省エネ」の特徴は、以下のような多様な分野の変革をもたらす。
データセンターの地方分散
超低遅延通信により、情報が即座に送れるようになるため、建設場所を都心に限る必要がなくなる。再生可能エネルギーが利用できる地域や、冷却コストを抑えられる冷涼な地域への柔軟な建設が可能となる。
医療(遠隔手術支援)
離れた病院同士をIOWNで結び、高精細な映像や音声を遅延なく伝送。地方の患者に対して都市部の「スーパードクター」が遠隔から手術支援ロボットを操作できるようになり、地域医療の格差是正に貢献する。
放送中継の効率化
スポーツやコンサートの中継において、現地へ大量の機材やスタッフ、中継車を派遣せず、放送局の本局から遠隔で編集・作成(リモートプロダクション)が可能となり、大幅なコスト削減を実現する。エンターテインメントチケット枚数が限られるコンサートにおいて、別の会場へ遅延なく高精細映像を届けて現地の臨場感を再現したり、離れた場所にいるアーティスト同士がリアルタイムでバーチャル共演したりすることが可能となる。ネット配信の遅延もなくなるため、スポーツ観戦の感動を現地と同時に共有できる。
4. 世界標準化に向けた展望と3つの重要要素
NTT単独ではなく、世界的な協調体制(エコシステム)の構築が進められている。
IOWNグローバルフォーラム: 2020年に設立され、大手IT企業、クラウド事業者、半導体メーカー、製造業など世界から170社以上が参画して活動している。
世界標準化に必要な3つの要素:
多くのパートナーとの協調: 半導体、データセンター、クラウド、AI、端末にまで行き着く技術であるため、多様なパートナーと一緒に育てること。
世界の多様な価値観の理解: 国や文化、文明によって異なるニーズを理解した上で標準化を進めること。
絶え間ない進化: 過去の成功に安住せず、急速に進むAIや、その先にある量子技術なども含めてサポートできるよう技術を進化させ続けること。
※「マイあさ!」の各時間帯の放送は、放送終了後から「らじる★らじる」のオンデマンド(聴き逃し配信)ページ、または公式アプリを通じて一定期間視聴することができます。
NHKラジオ公式ポータル(らじる★らじる): https://nhk.jp/radio
らじる★らじる 聴き逃し配信ページ: https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/
「マイあさ!」番組ホームページ: https://www4.nhk.or.jp/my-asa/
